【完全にネタバレ】トゥルー・グリット鑑賞

久しぶりに面白くて140字で感想がおさまらなかったので、ちょっこしおぼえがき。

わたくしは、
西部劇に興味がない。
コーエン兄弟が苦手。

というわけで本作は特に見るつもりなかったのです。
が、せっかくBSで再放送しているちりとてちんの一番面白い所*1を予約し忘れてしまいまして。このいかんともしがたい怒りにまかせて盗んだバイクで夜の校舎の窓ガラス割りに行ってもいいわけですが、西部劇見てスカっとしてしまうなんて平和な世の中なんでしょう。じゃなくって、「まあジェフ・ブリッジズだし」となんとなく録画したまま忘れていたのを本日鑑賞することに。

ちいさいけれど勇気と知恵があって弁の立つヒロインと、ダメ野郎に見せておいてここぞという時にかっこいいジェフ・ブリッジズの男っぷりにスカっとしました。
でも最後の台詞がなんだかインパクトが弱い気が。アメリカ人にはあれがパチっとハマる最後のピースになっているのでしょうか?

ちょっとケチつけてしまったけれど、全体で見れば非常に面白い映画でした。
西部劇ってこういうことなの?これで合ってるの?
なんとなく西部劇というよりも「超現実的なロード・オブ・ザ・リング」みたいな感じで見てしまいました。
ジェフ・ブリッジスが馳夫さんで、ヘイリーちゃんがフロドの旦那で、ミャット・デイモンがボロミア。

現実の森の旅はこんなに厳しいし、現実のさすらいの旅人の小汚さもきっとこんなもんなんじゃないかと。
一夜の宿を借りられるエルロンド卿の館なんかもちろんないし、あるのは指のない男の死体が置き去りにされてる山小屋なのです。

森の旅の怖さを知っているからこそ、英米人やオーストラリア人はロード・オブ・ザ・リングがこんなに好きなのかなと再確認したり。

ここからネタバレですが、(いちおう)善玉のはずの保安官とマティが目とか身体の一部を失うのは、「ラスト・エンペラー」で坂本龍一の甘粕大尉を片腕にしたベルナルド・ベルトルッチの「悪い奴は何かを失っているものだ」ですよね、たぶん。
もちろんマティは悪人ではないのだけれど、人の命を奪った彼女を「仇を倒した、偉かった」と両手挙げて褒めっぱなしにすることは、この監督たちには出来なかったのでしょう。そこはすごく納得してすっきりしました。

星空の下の保安官の無双っぷりは、弁慶の立ち往生並み。時代劇のような見せ場。
でも弁慶のように小さな雇い主を守って往生してしまうのではなくて、生き残って老いさらばえて西部劇ショーで巡業してしまうあたりが、潔しを良しとしすぎな武士道と、何も育たない土地を開拓して住み着いていった西武開拓民とのメンタリティの違いなのかな。

やけにドライな結末は「ヒーローを美化したくない」監督たちによる「真のヒーローとは何か」に対する答えなのかな。そう思えば、あのちょっと物足りないほどあっさりした最後の台詞も、少し納得が行くかもしれません。

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*1:徒然亭四兄弟再結集!の最初の二話