BBC ブラウン神父 S1e10「青い十字架」理性と神学は相反する??

昨日初めて参加した「文学フリマ」で買った探偵小説研究会発行の同人誌CRITICAに掲載のブラウン神父の評論がとても面白かったので、kindleでダウンロードして原文で「青い十字架」から読んでみましたが、1行も読んだ記憶がなく。おそらく大昔に翻訳で「ブラウン神父の童心」を読んだ時は、有名な「折れた剣」と「アポロンの眼」だけを拾い読みしていたようです。

ところで、原作を読み直した上で最近BBCでドラマ化したブラウン神父の「青い十字架」を見たら、驚愕の改変があることに気づきました。
CRITICA誌冒頭の川井賢二さんという方の評論で焦点になっていたブラウン神父の台詞があります。

「あなたは理性を攻撃したではありませんか。それはよこしまな神学でして(You attacked reason. That is bad theology.)」

これがドラマでは正反対の意味になっていたのです。

「あなたは神学を攻撃するために理性を擁護したではありませんか(You sponsored reason to attack theology.)」

「青い十字架」を担当した脚本家はPaul Matthew Thompsonという人で、メインライターではないのだけれど、これほどブラウン神父の本質を表した台詞を正反対にするのはどうかしているような・・・。フランボウのように聞きかじりの神学知識しかなくて「理性と神学は相反するものだ」と思い込み、正反対の意味に解釈してしまったのかもしれません。が、脚本家としては致命的に読解力のない人だということになります。でも意図的にやっているならちょっとおかしいですよね。

Paul Matthew Thompsonさんはフランボウ役を演じたJohn Lightが昔レギュラー出演していたHolby Cityで沢山書いていたようです。おそらくJohn Lightとなじみがあるせいなのか、ブラウン神父で3シリーズに渡ってフランボウが出てくる回を三回とも担当しています。BBC版でフランボウが大男ではなくきゃしゃな中二病のかまってちゃんになったのは、この人の脚色によるものなのかもしれません。

なにしろ原作は小話というかたとえ話みたいな短編ばかりで、ドラマ化するにあたり沢山の新キャラを作ったり、時代も変えてしまっているので、相当改変しているのは分かっていたけれど、主人公の特徴を表す台詞を変えるのは解せません。単に聖書の言葉だけを信じている世間知らずではなく、決して理性を否定しない人だからこそ正しく人を見抜けているのに。

とはいえ不思議なのは、ドラマ全体から受けるブラウン神父の描写は原作に反していなくて、信仰と理性を両立した真っ当なおじさんに見えることです。なので尚更「青い十字架」での台詞の改変が奇妙です。ちょうど良い機会なので他のエピソードもぼつぼつ原作読んで、ドラマを見直してみようかと思います。

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