ソーシャル・ネットワーク ☆☆☆☆

ちいさ〜な、せかい〜♪(二重の意味で!)

この映画を人に勧めるかと言えば、たぶん誰にでも薦めると思う。法廷ものとしても青春映画としても「今」の風俗をタイムリーに切り取った作品としても面白いから。でもアカデミー賞取るかな、と言われたら微妙でした。

映画館で見るほど大きなスケールの話でもなければ、小品とはいえ人間心理の奥を丁寧に描き込んだ話でもなければ(脚本も役者も監督もすべてが素晴らしい仕事をしてるのだけど)、デイヴィッド・フィンチャー監督に期待してしまうような凄い映像美があるわけでもないので、「映画を見たなー!」という充実感には欠けます。なので映画館を出た直後は、なんとなく肩すかしに感じたけれど、後からじわじわ面白く感じました。

人はいつ騙されたと気付くのか(双子の場合あるいはアメリカの上流階級について)

ちょっとズレてるかもしれませんが、面白かったのは、ボートバカ一代双子とエデュアルドが「騙された」と気付いてから訴訟を起こすまでのタイミングの違い。

これだけアメリカは訴訟社会と言われているのに、サイトのアイディア丸ごとパクられたと分かった時点でも、双子は(正確にはそのうちの一人が)なかなか訴訟を起こさない。理由は「ハーバードの紳士は訴えたりしない」
大体あれだけメール無視されているのに騙されたと気がつくまでにもかなりの時間がかかっている。Drイーブルのスターバックスでもなし得なかった速度でフェイスブックがヨーロッパ侵攻に成功した時点、つまり自分たちの始めたコネクトUが巻き返すには完全に手遅れな頃になって、ようやく訴訟を起こす。

ちょうど、つい最近放映されていたメンタリストでも「これくらいの事で訴えたら器の小さい奴だと思われて恥しいから訴えないだろう」とジェーンが富豪のプライドをくすぐって、訴訟を起こされる前に防いだエピソード見たばかりだったので、妙に納得してしまいました。トヨタ集団訴訟やってる人たちとは階級が違うというか。まあ当たり前かな。

アメリカにはイギリスのような意味でのはっきりとした階級はないかもしれないけれど、やっぱり存在しているのですね、上流階級が。それもバーティ・ウースターを冷凍保存しておいて、たったいま解凍したばかりなのかしらって感じの人たちが。まあ、バーティさまはあの双子よりずっと感じのいい坊ちゃんだし*1、世界一賢い労働者階級者であるジーヴズがいつも側に控えてるから、あんなヘマは踏まないでしょうが。

人はいつ騙されたと気付くのか(エデュアルドの場合、あるいは最近はやりのブロマンス的視点について)

早い段階で預金凍結したり、株の配分が劇的に下がったと分かった瞬間に「訴えてやる!」とブチ切れたエデュアルドは、裕福と言っても、もう少し普通サイズの裕福さだったのかな。・・・まあ、エデュアルドの「訴えてやる!」は、過分に「あんな胡散臭い山師に俺の可愛い嫁やれるか!ちっくしょー、かわいさ余って憎さ百倍!!」的な、痴情のもつれが隠されていたので。いや、全然隠れてないですね、出っぱなし(こら)。

俳優さんMVP(ジャスティン・ティンバーレイクはトシちゃんの理想形、そしてアーミー・ハマージェーソン・シーゲルの従兄弟だと思うの編)

もちろんジェシー・アイゼンバーグアンドリュー・ガーフィールドも上手かったし、エリカ役の子が凄く可愛くて少しだけハリウッド版ドラゴンタトゥーの女が楽しみになったけど、典型的なIT長者のなれの果てを演じたアイドルのジャスティン・ティンバーレークのあまりの潔よさに、彼を見直してしまいました。地獄と天国を見せてくれるメフィストフェレス的なクズ男。ティンバーレークは、なぜこんなに人気があるのかよく分からないのだけど、同じ役をキムタクが同じように出来るかって言ったら、絶対この役引き受けないし、多分「ナップスター」っていう映画になってしまう。一世風靡した人が人気が下がっても全盛期のままのつもりでいる可笑しさと言う意味ではトシちゃんこそこの役をやるべき!とか思ってしまいました。

IMDb見てようやく気付いたんですが、あのボート馬鹿一代双子は、一人の俳優さんが二役で演じていたんですね。正確にはボディダブルの人と二人三脚(ボディダブルの人の顔をCGで消去して後からアーミー・ハマーの顔を足した)。金髪は染めてたみたいで、元はブルネット。素顔はどっちかというとダイエットに成功したジェーソン・シーゲルみたいだったので、余計に好感が持てました。マーシャルの従兄弟役とかでHIMYMに出てくれないかしら。

「コードはともだち!」あるいはマーク・ザッカーバーグの気持ちが分かってしまったモーメントについて

なにしろマーク・ザッカーバーグが何を考えているのかほとんど描写されないので、真相は結局藪の中。でも全く共感できそうもないキャラクターとして登場したマークが、「親友」から訴訟を起こされて一人ぼっちになり、ラストシーンでは自分を振ったガールフレンドにフレンズ申請出して、返事が来ないかとリロードかけまくってる姿で終わっている。脚本家は、観客を最終的にはザッカーバーグに感情移入しやすくするための工程をかなり使っているわけで、ちょっとマークを甘やかしすぎかつ愛しすぎな感じがしました。そういう意味では脚本家が一番シンクロしていた登場人物はエデュアルドだったんだろうな。

でもこの映画の中でマークが一番愛していたものが描き切れていない気がして、少々消化不良でした。多分彼はエリカとかみ合わない会話をしたり、フェイスブックCFOを名乗っているくせにサーバーを止めるような行為をしたり基本機能の操作すら覚えないエデュアルド(statusの変更をしようとした事もなければ、The Wallが出来る歴史的タイミング?に立ち会っているのに喜んですらくれない)にいちいち基本を説明したりしているよりも、コーディングしている時こそが一番しあわせ。思いついたアイディアをその場でコーディングして、思った通りに実現出来た時の幸せ感、それに対する世界中からのフィードバック。ゾクゾクするだろうな。付随してお金が儲かるかどうかなんてのは二の次だったのも事実。今じゃたとえば私は名古屋在住なのでログインするたびに「名古屋大好き倶楽部」とかゆうウザイ広告がいつも表示されていて「全然クールじゃない」状態なんですが、まあこれだけデカイ会社になってしまったらマネタイズしないといけないのでしょうがないんでしょう・・・。

でもって、先日まさにマークが双子から企画を持ちかけられた時と全く同じ体験をしてしまいました。「こいつら入れずに自分でイチからやった方が断然成功する!」と確信してしまったマークの気持ちがなんとなく分かってしまったのでした。なんつーかほかのヒトが書きかけで放置したコードを直すのはかなりめんどいです。自分が何をやりたいのよく分かってないクライアント相手なら倍率ドン。(誤解されないために言えばわたくしはプログラミングは全くわかりませんが、英語の論文の直しとかすることがあって、「直すくらいなら最初から書いた方がマシだ。というかもう要旨を見せてくれたら最初から全部書くよorz」と思う事があるので、少しは近いかなーと←全然違う?)

まとめ

既にフェースブックを使っている人にはもちろん面白いし、使ってなくても「ひどい騙され方をした事がある人」「理解度の低いクライアントとくたびれる商談をした事があるプログラマ」「borderソシオパスの男に貢いだ挙句振られた人」には面白いのではないかと思います。インターネット社会を反映してるつもりなのか情報が最初から最後までめまぐるしく大量に流されっぱなしなので、60代以上の方にとってはくたびれるからあまりオススメしません。後味悪いけど「ゾディアック」の方が面白いよとか言ってみる(こら)。

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*1:少なくとも人にものを頼む時に、ルールとはいえ自転車置き場より先には通せないと言ったり、あまつさえそこで立ったままサンドイッチ食べさせようとはしない