SMASH 第1話鑑賞

かれこれ10年くらいファンをやっているイギリス人俳優ジャック・ダヴェンポートが出演している。・・・ほぼただそれだけの理由でずっと追いかけてきたアメリNBCのミュージカルコメディドラマの第一話の感想です。(本国ではすでに4話まで放映中。iTunes USAで購入可能です)

ブロードウェイで活躍する作曲家トム(クリスチャン・ボール)&作詞家ジュリア(デブラ・メッシング)コンビが、マリリン・モンローの生涯をミュージカル化しようと思いつく。肝心のマリリン役の主力候補は二人。キャリアも実力もお色気もあるが代表作はまだないベテランのアイヴィー(ミーガン・ヒルトリー)と、キャリアもなければ欲もないけど、キラリと光る才能と純真さを持つ若手のカレン(キャサリンマクフィー)。

脇を固めるのは、才能はあるが女好きでホモフォビアのイギリス人演出家デレク(ジャック・ダヴェンポート)、離婚調停のせいで進行中のプロジェクトが頓挫し、「次の作品」を探していた大物プロデューサーのアイリーン(アンジェリカ・ヒューストン)など。

ここがヘンだよ、ダベ夫さん

ジャック・ダヴェンポート演じるデレクさんは、やたらに上流階級丸出しのイギリス英語でイヤミばっかり言ってるけど、バカみたいに仕事が出来るので業界からは引っ張りダコ。つまりThis Lifeのマイルズがアラフォーになった感じです。はい、ハマリ役です。

マリリン役のオーディション中も「スカーレット・ヨハンソン呼べないわけ?」「クリティン・チェノウェス?俺が育てたAA略)」なんてイヤミと自慢をブツブツ言い続けるわ、ゲイの作曲家に露骨にヤな顔するわ、カレンちゃんにセクハラまがいの要求するわ。でも、まああの面構えなので、なんとなくどこか間が抜けてるとゆーか、そこまでヤな奴には見えなくて可愛いです(贔屓目200%)。ただ、ブロードウェイの演劇界のゲイの多さをイヤがっているのがちょっと謎です。ウェストエンドにだって死ぬほど沢山ゲイはいると思うのですが。

あと、デレクさんの上から目線の元となっているのがこのレジュメ。オリビエ賞二回受賞ってすごすぎるでしょう。

Winner of two Olivier Awards for productions of "Uncle Vanya" and "Greater Title." Broadway: "The Full Monty," "Chicago," "Hairspray," "Uncle Vanya," "Greater Title," "Wit." West End: Regional/Off-Broadway: "The Sea Gull" (BAM); "Love in Crimea" (Theatre Sans Argent); "A Streetcar Named Desire" (Williamstown); "The Butterfly Collection" (Playwrights' Horizons); "Current Events" (Manhattan Theatre Club); "Love Soup" (Naked Angels); "Cedar City Falls: Unplugged" (Galapagos Arts Center); "The Intelligent Design of Jenny Chow" (The Atlantic Theater); "String Fever" (Ensemble Studio Theater); "a.m. Sunday" (Actors' Theatre of Louisville); "Maria/Stuart" (Woolly Mammoth). Wills was nominated for a Tony and a Drama Desk award for "The Full Monty." Wills' independent film credits include "The Underbelly" (New Line) and "Home for Good" (Lionsgate). He has also directed several BBC specials and is an Adjunct Professor of Directing at LAMDA (London Academy of Music and Dramatic Art). Wills recently signed on to direct a project based on the life of Marilyn Monroe, with early collaborator Tom Leavitt. A true son of the West End, Derek Wills spent his childhood shadowing his father, Charles Wills, a well-known orchestral flutist.

ここがヘンだよ、SMASHさん

ミーガンもキャサリンも歌唱力/ダンスとも申し分なし。最初から最後までミュージカル場面がふんだんに入っていてお得な感じです。ただ、なんで今マリリンなの?(デレクもアイリーンから企画を聞くなり「なんでマリリンなんか」と速攻で否定してかかっていました)というのがイマイチよく分かりません。「ブロードウェイの内幕もの」というのが大きな売りとなっているドラマなのに、肝心のミュージカルのテーマは作曲家のアシスタントの思いつき、でした。作詞家/作曲家ともにマリリンに特に思い入れが深いわけでもなく。二人ともアメリカ人でショービズ人間なので、常識・教養としてマリリンの生涯にはものすごく詳しい。アイディアもポンポンと出てきて、あっという間にストーリーが出来てしまいます(このあたりの組み立てをもっと見たいのに)。うーん、「ブロードウェイのミュージカルってこんな思いつきで作っちゃうの?」という誤解を生みそう。いや、ひょっとしてこれこそが現実なのでしょうか?!(だから大金かけてもすぐポシャっちゃったりするのかもしれません・・・)

オリジナル楽曲も良し悪しなのだ

「対象年令が大人のGlee」とよく言われていますが、Gleeと大きく違うのは、オリジナル楽曲を沢山用意していること。「マリリン」のために、トニー賞受賞経験もあるベテランの音楽家*1が何曲も書き下ろしてします。豪華!!

ただ問題がありまして。オリジナル楽曲はいい曲揃いなのですが、45分のパイロットで一気に3曲もオリジナル曲を発表してしまいました。結局、どの曲も観客まで浸透し切らないうちに第一話が終了!・・・モ、モッタイナイ。
もっとしつこく一曲を作る過程を見せて、視聴者がその一曲に思い入れを抱けるように、パイロットが終わった頃にはその一節をハミング出来るくらいに強調しても良かったのではないかと。第二話では更に新曲(ラテン調のダンスナンバー。これもいかにもミュージカルらしい曲)投入で、またもや印象が散漫に。

Gleeを見ていていつも感心するのは(特にS1の前半)選曲の上手さ=楽曲とストーリーのシンクロ率の高さ。ストーリー中でキャラクタの気持ちが高まった時に、その気持ちに一番ぴったりの曲を歌わせるので「あのエピソードのあの曲」とカバーなのに一曲一曲がとても印象に残ります。でも、SMASHは折角オリジナル曲なのに「マリリンのミュージカルの中の曲を練習している女優」のシーンになってしまい、「マリリンを演じている女優の気持ち」にはあまりシンクロしていないので「曲はいいのに印象に残らない」のかもしれません。

(賛否両論あれど)Gleeを一躍オバケ番組にのし上げた「豪華ゲスト作戦」もありえますし(劇中で名前のあがっていたチェノなら、ミュージカル愛のためにきっと出演してくれる?!)、マリリンのどの側面を描きたいのかによっては、現代でやる意義も描けるかもしれないし(現時点ではここが全然ダメです)、今後の改善に期待します。とりあえずキャサリンマクフィーとジャック・ダヴェンポートのカップル(まだカップルじゃないけど)はなかなか見目よろしくってよv

*1:NPHが司会をした第63回トニー賞授賞式のエンディングソングを作ったMarc Shaiman & Scott Wittmanコンビ。最近ではCatch Me If You Canのミュージカル版を作詞作曲