第85回アカデミー賞結果

<作品賞>

この中で授賞式前に見ることが出来たのは、アルゴ、レミズ、ライフ・オブ・パイゼロ・ダーク・サーティの4本。ミュージカルは舞台も映画も好きすぎるので、レミズは映画としては全く高評価出来ないのですが、この大ヒットで最近のミュージカル映画とブロードウェイの断絶が緩和してほしいです。アルゴはスリル満載で確かに面白いけれど、政治的に繊細な部分をtiptoeした小ズルい手堅い作りという感じが否めません。パイは予告からは想像もつかないほど豊かな語り口の物語。そして総合的に芸術作品として一番見応えを感じたのはゼロ・ダーク・サーティでした。結果はアルゴ。この中でエンディングもテーマも一番アメリカらしい映画で有ることは間違いないです。

<監督賞>

ここまで数々の前哨戦を総なめにしてきたベン・アフレックがノミネートされていないので、やや予想の難しい部門でしたが、アン・リー監督の受賞は嬉しい誤算でした。監督賞2度目の受賞も異例、アジア人として監督賞受賞はアン・リーだけ。受賞スピーチで監督が何度も強調していたのは「台湾の人たち、ありがとう。台湾で撮れてよかった」そう、これ台湾資本、台湾人監督、台湾人スタッフ満載の台湾映画なんですよね。

そして、見たこともないような美しいVFX満載なのに、特殊効果を見せるだけで満足しないで、あくまでも物語を伝えるための手段として特殊効果を使いこなした監督の手腕は素晴らしかった。意外だけど納得の受賞でした。

<主演男優賞>

ダニエル・デイ・ルイスはキャスティングされたらアカデミー賞取るところまでが仕事みたいになってきてるので、今回もお仕事をきっちり果たしただけなのです。一緒にノミネートされた何れ劣らぬ俳優の皆さん、天災にでも当たったと思って諦めましょう。

<主演女優賞>

ゼロ・ダーク・サーティで難役を見事にこなしたジェシカ・チャステインか、前哨戦で強かったエマニュエル・リーヴァかと思いましたが、22歳のジェニファー・ローレンスが受賞。見る度に、卵が殻を割ってヒヨコから白鳥になるようにどんどん変身していくので、この先が楽しみです。

助演男優賞

まさに名優揃いの熾烈な競争の中で、イングロリアス・バスターズに続いてクリストフ・ヴァルツが二度目の助演賞受賞。

助演女優賞

<アニメーション作品賞>

<撮影賞>

ライフ・オブ・パイが、特殊効果だけでなく、撮影賞も受賞。息を呑むような迫力と美しさの構図連発だったので、これは納得。どちらかというと、プロメテウスがここにノミネートされていない事に少し驚きました。

<衣装デザイン賞>

<長編ドキュメンタリー作品賞>

  • "5 Broken Cameras" Emad Burnat and Guy Davidi
  • "The Gatekeepers" Nominees to be determined
  • "How to Survive a Plague" Nominees to be determined
  • "The Invisible War" Nominees to be determined
  • シュガーマン 奇跡に愛された男/Searching for Sugar Man」 Nominees to be determined

伝説のミュージシャンを追ったドキュメンタリーが受賞。絶妙なタイミングで、3月16日から日本公開。公式サイト

<短編ドキュメンタリー作品賞>

  • "Inocente" Sean Fine and Andrea Nix Fine
  • "Kings Point" Sari Gilman and Jedd Wider
  • "Mondays at Racine" Cynthia Wade and Robin Honan
  • "Open Heart" Kief Davidson and Cori Shepherd Stern
  • "Redemption" Jon Alpert and Matthew O'Neill

編集賞

WOWOW町山智浩が、「一番いい編集をした映画=一番いい仕上がりの映画なんだから、編集賞を取った時点でアルゴが作品賞取るのはわかってた」と豪語してましたが、どうなんでしょう。気になる方は、過去の編集賞受賞作品作品賞受賞作品を比較してみてください :-p

<外国語作品賞>

  • アムール/Amour」オーストリア
  • 「コンティキ/Kon-Tikiノルウェー
  • 「ノー(原題)/No」 チリ
  • 「ア・ロイヤル・アフェア(英題)/A Royal Affair」 デンマーク
  • 「魔女と呼ばれた少女/War Witch」カナダ

<メイクアップ・ヘアスタイリング賞>

  • ヒッチコック(原題)/Hitchcock」 Howard Berger, Peter Montagna and Martin Samuel
  • ホビット 思いがけない冒険/The Hobbit: An Unexpected Journey」 Peter Swords King, Rick Findlater and Tami Lane
  • レ・ミゼラブル/Les Miserables」 Lisa Westcott and Julie Dartnell

<オリジナル楽曲賞>

オリジナル歌曲賞

  • "Before My Time" 「チェイシング・アイス(原題)/Chasing Ice」Music and Lyric by J. Ralph
  • "Everybody Needs A Best Friend" 「テッド/TED」 Music by Walter Murphy; Lyric by Seth MacFarlane
  • "Pi's Lullaby"「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日/Life of Pi」Music by Mychael Danna; Lyric by Bombay Jayashri
  • "Skyfall" 「007 スカイフォール/Skyfall」 Music and Lyric by Adele Adkins and Paul Epworth
  • "Suddenly" レ・ミゼラブル/Les Miserables」 Music by Claude-Michel Schonberg; Lyric by Herbert Kretzmer and Alain Boublil

<美術デザイン賞>

<短編アニメ作品賞>

  • "Adam and Dog" Minkyu Lee
  • "Fresh Guacamole" PES
  • "Head over Heels" Timothy Reckart and Fodhla Cronin O'Reilly
  • "Maggie Simpson in "The Longest Daycare"" David Silverman
  • "Paperman" John Kahrs

<短編実写作品賞>

  • "Asad" Bryan Buckley and Mino Jarjoura
  • "Buzkashi Boys" Sam French and Ariel Nasr
  • "Curfew" Shawn Christensen
  • "Death of a Shadow (Dood van een Schaduw)" Tom Van Avermaet and Ellen De Waele
  • "Henry" Yan England

<音響編集賞

なんと異例の2作品がタイで受賞。

<音響ミキシング賞>

<映像効果賞>

  • ホビット 思いがけない冒険/The Hobbit: An Unexpected Journey」 Joe Letteri, Eric Saindon, David Clayton and R. Christopher White
  • ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日/Life of Pi」Bill Westenhofer, Guillaume Rocheron, Erik-Jan De Boer and Donald R. Elliott
  • 「アヴェンジャーズ/The Avengers」Janek Sirrs, Jeff White, Guy Williams and Dan Sudick
  • 「プロメテウス/Prometheus」 Richard Stammers, Trevor Wood, Charley Henley and Martin Hill
  • スノーホワイト/Snow White and the Huntsman」 Cedric Nicolas-Troyan, Philip Brennan, Neil Corbould and Michael Dawson

<脚色賞>

うん、たしかにテンポの素晴らしい脚本でした、アルゴ。

オリジナル脚本賞

タラちゃんがパルプ・フィクションに続いて二度目の受賞。

ノミネート数星取表

(ドキュメンタリー、短編映画は割愛)

受賞結果星取表

開けてびっくり?最多ノミネートで人種問題に取り組んだマジメなリンカーンが2部門に終わり、最多受賞作品は哲学的な童話を実写化した「ライフ・オブ・パイ」でした。実際これほど3D IMAXで見る価値のある映画はない、というくらい驚愕の映像美の作品であり、それを超えるほどの人間の演技力と物語の意外性がありました。入場料の安いアメリカですらnetflixで映画館離れが問題となっているのですから、これほど「映画館で見なきゃ!」と思わせる作品には、やはり何か賞を上げたくなりますよね。納得の結果です。ただ、ゼロ・ダーク・サーティが思ったほど主要賞に絡んでこなかったことだけが残念でした。