Accused第3話 Helen's Story

 
BBCが月9に送る、ジミー・マクガヴァン脚本の超重量級のドラマシリーズAccused。今回はまだ20歳の息子を勤め先の工場の事故で亡くした両親の物語。これで3話めですが、本当にハズレがない!シリーズなので、ぜひ日本でも放送してほしいです。もしNHKで放送したら、大反響になりそう。或いはNHKがこんなドラマを作りたかったんだ、と地団太踏んでくやしがってしまう作品かもしれません。脚本の力と演技の力と無駄を一切省いた演出、どれが欠けても成立しない、力量が試されるシリーズです。

今回は、傑作政治コメディThick of Itのピーター・カパルディと、Truly Madly Deeplyジュリエット・スティーヴンスンのダブル主演。二人にエミーでもゴールデン・グローブでもBAFTAでも、もうあげられる賞は全部あげてしまいたいくらいの、名演を超えた演技でした。

以下ちょっこしネタバレ気味です。
うわーーーーーーーーーーーーん!

なんかもう、最初から最後まで泣きっぱなしで、目が痛いです。
ピーター・カパルディは、タッカーさんとは全然違うキャラクターで来るんだろうなあとは思っていましたが、ここまでとは・・・。おいら泣きすぎて上手く説明できないよ!!!という状態なので、まずはGo Johnny Goのwhiteanklesocksさんの素晴らしい紹介記事をお読みください!

明るくて優しいベテランの小学校の先生だったヘレンが、なぜ重大事件を起こしてしまったのか。今回も引き込まれるようにして、一気に見てしまいました。

ピーター・カパルディ≠タッカーさん

ピーター・カパルディ演じるフランクは、愛する息子をたった20才で突然失い、途方に暮れて、何も手に付かない。痛々しいほどに不器用で繊細な人で、同じように悲しむ妻をいたわる余裕すらなく、お酒に逃げて行ってしまう。
妻のヘレンは、息子が勤めていた会社を訴えるという使命を見つけ、訴訟の証拠集めに邁進する事で、悲しみに沈み込んでしまうのをなんとか避ける事が出来たけれど、この事故が起きる前から失業中だったように見えるフランクは、お酒で悲しみをなんとか紛らわし、より無口になり、無口が限界に達すると、今度は妻に八つ当たりするように激昂し・・・。
でも後から分かってくるのは、この夫が妻を本当に愛している事。何度も何度も、二人一組じゃないと歩いていけないかのように、二人がぎゅっと手をつないで進んでいく姿が、繰り返し現れます。ああいかん、書いてるうちにまた泣けてきてしまいました・・・。

 
フランクをハリウッド映画に出てくるような「妻を守る頼もしい夫」に描かなかったからこそ、これほどまでに見ているだけで胸が痛くなってくるようなドラマになったんですね・・・。どうにも出来ずに弱さをさらけ出す男を、多くを語らず、怒りながら泣いているような目と、自分を支える事すら出来ないかのようにアイロン台にもたれかかったり、ただ庭に木を植える姿だけで伝えきってしまったピーター・カパルディさんの演技、胸に迫ってきました。正に必見です。

ヘレン≠西川きよし師匠の奥さん

・・・こんなシリアスなドラマでもこんな調子でスミマセン。ヘレン役は、アラン・リックマンのTruly Madly Deeplyに主演していたJuliet Stevensonさんでした。グウィネス・パルトロウ「エマ」ジュリア・ロバーツの「モナリザ・スマイル」、キーラ・ナイトリーの「ベッカムに恋して」などで何度も遭遇してるのですが、肝心のTruly..を見ていなかったので、今回ようやく顔と名前が一致しました。でも、もう一生忘れる事はないと思います。それくらい強烈な演技でした。

 

日本の女優さんで言えば、田中裕子さんみたいな感じでしょうか。抜群に演技が上手いのに全く技巧を感じさせなくて、とても自然。今回演じた役は、地味で飾り気はないけれど、知性を感じさせ、芯の強さと可愛らしさを併せ持った女性。本当に素晴らしいハマリ役でした。

選曲センスの妙

今回は、音楽の使い方が特に印象的でした。

These Foolish Thingsは、法律に裏切られてばかりのヘレンを励まそうと、補助教員の女性がバーに連れ出してくれて、善意100%で面白おかしく替え歌にしてカラオケで歌ってくれたのですが・・・。
元々の歌詞は「ロマンチックな場所への航空券、隣の部屋から聞こえるピアノ、遊園地の回転ブランコ。こんなちょっとしたものを見るたびに、あなたを思い出してしまう」と、オシャレでノスタルジックな物を列挙して歌うラブソング。でも「こういう物と見ていると、あなたを近くに感じる。いないはずのあなたの影が離れない」と、普段ならなんとも思わない歌詞も、大事な人を失った人ばかりの人にとっては、辛くて聞けない歌に・・・。たまの気晴らしさえもままならないヘレンの姿が、見ていて辛かったです。

もう一曲は、イーグルスのDesperados。出来過ぎなタイミングで出来過ぎなシチュエーションで使われているのですが、この歌詞が、フランクからヘレンへの不器用な愛情のようでもあり、お酒に逃げていた自分に語りかけているようでもあり。素晴らしいセリフをいくらでも書く事の出来る、天才脚本家のジミー・マクガヴァンが、あえて歌詞に代弁させたのも分かるようなハマり具合。実はこの歌から今回のエピソードを思いついたのかな、と思ったほど。歌詞を和訳して下さってる方がいたので、こっそりリンクしてみます。