SEXとアートと美しき男たち Desperate Romantics第1話

BBCの異色スリラーThe Shadow LineですっかりファンになってしまったRafe Spall君出演作が、素晴らしいタイミングでLaLa TVで放送v しかもテーマは、ラファエル前派。

BBCでのオリジナルタイトルはDesperate Romantics 「どうしようもなくロマンティックな人たち」と「困り果てたロマン派の芸術家たち」のダブルミーニング。イギリスほどラファエル前派が浸透していないかもしれない日本では、これくらい分かりやすいタイトルを付けた方がいいのかもしれない・・・のでしょうか。かなり大胆に脱いでるシーンがあるので、高尚な芸術のドラマだと思って、うっかり小さなお子様に見せないように、邦題で警告してくれているのかもしれません(爆)

史実に忠実とは程遠い大胆な脚色がされていますが、「超若い美大生3人組が、イギリスの美術史にインパクト与えちゃったんだぜ!」というのが一番描きたい事のようなので、堅苦しいヴィクトリア朝を舞台にしたちょっとロケンローな美術史ドラマとして、とても面白かったです。今まであまり存在を重視されてこなかった、真面目でマトモなフレッドの視点から描くというやり方も、エキセントリックな主人公達を客観視できて上手ですよね。ギャツビーに対するニックのような。

第1話で取り上げられた作品

ウィリアム・ホルマン・ハント「プロメテウスからシルヴィアを助けるヴァレンタイン」

愛しのレイフ・スポール君演じるハントの作品。ドラマの中では、ラスキンにモデルの顔がSluttish(娼婦のようだ)と言われて、リジーをクビにしてまで描き直したアレですが、たしか実際のモデルはリジーひとりのハズ・・・です(ごめんなさい、裏付け取ってません)。


ウィリアム・ホルマン・ハント「雇われ羊飼い」

不器用な童貞wとして描かれていたハントですが、ホントに純粋でバカ真面目な人でした。「自然を自然光のもとでスケッチして描くのが、本来の美の姿だ!」というラスキンに洗脳されて、直射日光下でスケッチしすぎて目が悪くなってしまった(爆)のですが、このエピソードはドラマには出てくるかな(晩年までやれば必ず出てきます)。この作品でも、頑張って自然光のもとでスケッチした草原の草花が、頑張りすぎて、自然というよりかえって不自然に見えるくらい色鮮やかに描かれていますよね。・・・こういう画風の人です。


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「見よ、我は主のはした女なり」

もうこの時代に受胎告知をテーマに描いている人はあまりいなかったと思うのですが、あえてルネサンス期のような主題を、わざとリアルに人間っぽく描いてみせた作品。王道の描き方では、恥らいを見せつつも喜びつつ運命を受け入れるマリアさま像が一般的でしたが、この作品では、生々しいというか痛々しいまでのawkwardさ。天使ガブリエル・・・そうゲイブリエル・・・には羽根もありません。これでは、当時の保守的な社会に酷評されてしまうのも無理はありませんよね。分かっててやってるのだから、かなりロケンローな芸術家です。・・・と言いたいところですが、実はこの作品があまりにも酷評されたので、以後ロセッティは作品の公表を怖がってしまいます。型破りなようだけどナイーヴなお人なのですな。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「両親の家のキリスト」

ドラマの中では、目の前で文豪チャールズ・ディケンズに酷評され、目の前でヴィクトリア朝最大の美術史批評家ジョン・ラスキンが擁護してくれる!という、美術史好きには超豪華なシーンになってしまいましたが、もちろんあれはドラマ上の演出です。実際には、ディケンズは自分が主催する雑誌Household Words誌上に批評を載せ、ジョン・ラスキンによる擁護は、The Times紙への寄稿という形でした。

ディケンズの批評の抜粋。

In the foreground of that carpenter's shop is a hideous, wry-necked, blubbering, red-headed boy in a bed- gown; who appears to have received a poke in the hand, from the stick of another boy with whom he has been playing in an adjacent gutter, and to be holding it up for the contemplation of a kneeling woman, so horrible in her ugliness, that (supposing it were possible for any human creature to exist for a moment with that dislocated throat) she would stand out from the rest of the company as a Monster in the vilest cabaret in France, or the lowest gin-shop in England.

この絵の発表はあの展覧会ではなく王立美術院でした。それをディケンズが見かけ、こういう批評を書いたのです。だって、あんなに若くて非主流派の展覧会に、わざわざ当代髄一の作家が来てくれるのってヘンだなって思いませんでした?

でも、まずミレイが出展して、世間から酷評され、元々神童ミレイの才能を買っていたラスキンが助けてくれて・・・というくだりを事実通りに描いていたら、随分時間がかかってしまいます。ディケンズラスキンが展覧会に居合わせた事にすれば、5分で描けてしまう。実に度胸があって手際の良い翻案だったと思います。

ロセッティがイケメンすぎる?!

ロセッティは、有名なこの写真のせいで、抑圧的なヴィクトリア朝のイギリス紳士が女性に積極的に出られないのをいい事に、ブサイクなのにモテモテだったイタリアンなちょい悪オヤジ、というイメージ。ところが、このドラマのキャスティングでは、Being Humanで大人気のAidan Turner。ロンゲとヒゲで暑苦しさこそちゃんと表現されているものの、イケメンすぎない?と思っていたのですが・・・

なんと若い頃の自画像は、ドラマより美形?!

まあ、自分大好き!のロセッティの描いた自画像なので、写実性についてはなんとも言えません(爆)


キャストでお気に入りは、当然レイフ君・・・と言いたいところですが、真面目な役すぎてThe Shadow Lineのキ○ガイさ&コワカワさが発揮できないのがちょっと残念。むしろ華奢な神童のイメージがニール・ハノンを彷彿とさせる、ミレイ役Samuel Barnett が気になりましたv いや、レイフ君も相変わらず可愛いのですが。


ロセッティが女関係で迷惑をかける相手といえば、アーツ&クラフツ運動のウィリアム・モリスですが、このドラマではモリスも出てくるのでしょうか?テンポが早いからバーン・ジョーンズのようなフォロワーも出てくるかもしれませんね。続きが楽しみですv

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