21世紀版「シャーロック」全3話鑑賞。


今イギリスで一番話題になっているドラマ。週末に全話見て、なんというかもう「買ってー!買ってー!!」とデパートで床にひっくり返ってダダこねる子供の気持ちが生まれて初めて分かりました。
NHKさん、BBCのシャーロック買ってーーー!買ってーー!!!

現代のロンドンを舞台に、ブラックベリーと馬車代わりにロンドンの黒いタクシーを駆使して、難事件を鮮やかに解決する自称「世界初のコンサルタント探偵」シャーロックと、アフガニスタンで軍医を務めていたもののPTSDで帰国したワトスン先生*1、おなじみレストレード警部、ハドソン夫人、そして宿敵モリアーティ教授までそろって登場する、聖典への愛と遊び心と「知的にも娯楽的にも最高に面白いドラマを作りたい」という製作陣の意欲が溢れた大傑作。ちなみに第一話のサブタイトルはA Study in Pink(桃色の研究・・・って日本語にするとフランス書院のパロディ小説みたいですが)。

演出も冴えていて、メール中毒で検索魔のシャーロックらしく、メール書体で事件の解説がさりげなく画面にポップアップするシーンや、シャーロックが車に乗った犯人を徒歩で先回りする過程をgoogle mapのルート検索さながらに表現する演出が実におしゃれ。日本のテレビドラマ製作者やCMクリエーターに見られたら、即効でマネされそうです?!

とりあえずトレーラーはこちら

シャーロックの変人ぶりは、同じくシャーロック・ホームズを下敷きにしたハウス先生を見慣れてる目にも「おいおいおい・・・」とつぶやくことたびたび。連続殺人の被害者が増えてレストレードに捜査参加を依頼されると、ドアが閉まって警部の姿が見えなくなった途端「ヤッター!!」と大喜びしたり、退屈しのぎがモルグの死体を女王様鞭で叩きまくることだったり(遺体への損傷の度合いを調べるためだと言っていますが、どう見てもストレス解消にしか見えませんw) まだ30代でハウスほど屈折してない代わりに、スコットランドヤードの刑事から「サイコパス」とあだ名をつけられても「節子、ぼくサイコパス(殺人鬼)ちゃう、ソシオパス(社会不適応)や」と言い返す、かなり「いい性格」してますv

主演のベネディクト・カンバーバッチは映画館まで観に行った「ブーリン家の姉妹*2」では全く印象に残っていなかったのですが、髪を伸ばしてロングコートを翻してロンドンの街を走り抜ける姿はさながら「お茶らけないドクターフー」。実際、顔がマーリン+得体の知れぬお色気で、身体がマトリックスの頃のキアヌ(細身で締まってて長身)で、声がジャック・ダヴェンポート+アラン・リックマン(←とどめ)。全英のfangirlが大騒ぎしいてるのも無理ございません。極東のfangirlも大騒ぎしてますもの!

ベネディクトのことばかり書いてしまいましたが、ワトスン役のマーティン・フリーマンも実にハマり役です。「銀河ヒッチハイクガイド」のアーサー・デントや「オフィス」のティムなど、変人に振り回されるお人よしな常識人役はお手の物ですが、今回はただ振り回されているだけでなく、シャーロックに気に入られてしまうのも無理はない、知的で寛容で穏やかだけど、少し陰のあるPTSD持ちの医師をいつもよりかなり抑えて演じていて、とても好感が持てます。脚本家がプロデューサーコンビではない第2話だけ、ちょい性格が違って「いつものマーティン」になってしまっていますが、第3話では持ち直してくれました。

ワトスンがホームズの活躍を書いて世間に伝えるのは聖典と同じですが、発表方法が「ブログ」というのがさすがです。ちゃんとBBCが「ワトスンのブログ」をまめにアップデートしてくれて、しかも第3話ではジョンがブログに書いた内容(シャーロックは素晴らしい推理能力と知識の持ち主だが、捜査に関係ないことには驚くほど無知で、地動説を知らなかったをレストレード警部が読んでたwというインタラクティブな展開に。シャーロックの知識に偏りがあるのも、聖典に忠実な設定ですねv バイオリンを弾くシーンもありますv 
他にシャーロックのブログ(Sceience of Deduction)、科捜研の助手でシャーロックに片思いしているモリーのブログもそれぞれのキャラクターを反映したデザインと文章にするなど、非常に凝った作りになっているのも嬉しいところ。!上記ブログにはドラマのネタバレが含まれる部分もあるので、ドラマ未見の方はご注意を!
脚本・原案は現在ドクター・フーのメインラインター&ショーランナー(統括監督)を務めるスティーヴン・モファットと元The League of Gentlemenで現ドクター・フーのプロデューサーのマーク・ゲイティス。二人ともドクター・フーで忙しすぎるのか、3話中1話ずつしか書いていないのがちょっと残念。1話90分で3話のみのかなり異例のシリーズですが、高視聴率で反響も大きかったので、すでにモファットと奥さんでプロデューサーのスー・ヴァーチュー(Couplingのプロデューサーで、主人公スティーヴのGFスーザンのモデル)が、シリーズ2製作はほぼ決定と、朝のワイドショーで発表済み。ドクターフーが一段落ついてからの撮影になるので、1年後くらいになってしまうようですが、待ってます!とりあえずシリーズ1のDVDは既に予約しましたv 
余談ですが、アメリカや日本ではドラマの話数はかなり厳格に決まっていますが、Couplingはシーズンごとに話数にバラつきが。理由は「モファットが納得が行くまで書けた話数のみしか製作しないから」とスーが以前にインタビューで答えていました。今回の異例の形態も、スーがプロデュースしたおかげで通ったワガママなのかもしれません。まあ、それなら2話もモファさん書いてよ、という感じですが、ぶつぶつ。(ETA:実は元々60分でパイロットを製作したのをBBCが気に入り、「TV映画のように90分枠で3本作って」とオーダーされたから。3本なのは、やはりモファットとゲイティスがドクターフーを制作しているため、スケジュール上これが限界だったようです)

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いいかげん日本でも発売されたので、こちらのリンクも貼っておきます、すみません・・・。

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*1:すみません、ハドソン夫人がワトスン先生好みのカレー料理を作っていたのを覚えていて勘違いでインド帰りと書いてしまいましたが、考えてみたら聖典でもワトスン先生はアフガン帰りでした。訂正しますた!

*2:ETA 25AUG2010: 原題に引きずられて邦題勘違いしておりましたー。直しました!