「インセプションみたよ!つまんなかったよ!でも、トム・ハーディはyouジョーカーを継いじゃいなよ!」の巻

cobbstop
以前に書いた感想が長すぎたので短くまとめようと思っていたのですが、ちーともまとまらないので諦めました(こら)。ちょっこし文法直したりしましたが、ほぼそのままです。サー・ケインがあんな事ポロっと言っちゃったwので「あ、間違ってなかったんだな〜」とホッとしたのも再掲の一因でございます。

以下再掲
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ようやく観に行きました。なんだか物凄い前評判だし、ビギンズはともかくとして、ダークナイトにはhats off!だったので、結構期待してたのですが。どんな緻密な構造の物語をみせてくれるのかしら、どんな見たこともない世界をみせてくれるのかしら、と。

結果的に言うと、中高生のときにPKディックと神林長平を読み過ぎて、ブレードランナーを映画館でディレクターズカット見ちゃって、マトリックスも一瞬でネタが割れた上に、某BBCの傑作*1が生涯で一番好きなドラマな人にとっては、コンセプト的にも映像的にも、特に驚きのない、とてもシンプルな映画でした。

木戸銭返せ!という駄作ではもちろんなく、ちゃんとお金をかけて、老若男女のいい俳優を結集させた、面白い娯楽映画ではあったのですが、マトリックス1を観た時のスッキリ感や、ブレードランナーを観た時の感動とかは求めてはいけないようです。

以下ネタバレなので、たたみます。

ここがヘンだよ、ノーラン先生

盗む方、仕掛ける方を主人公にしてしまったのが、おそらく失敗の元だったのかな、と。この手の作品は読みながら/見ながら「今わたしがいるこの世界は、現実なのか?それとも現実ではないのか?」と、自分の足元の地面が砂のように崩れていくような、あのクラクラするような感覚こそが醍醐味だと思うのです。でもインセプションでは「3層構造にします。3層目はお父さんのいる病院です」なんて設計図を言われて、本当にその通りに垂直に下へ下へ潜っていき、また上へ上へと戻っていく。
夢とか潜在意識って、こんなに整然とした世界なのかな? ティム・バートンの「アリスインワンダーランド」と同じようながっかり感でした。もっと映像で語れるはずのネタなのに、なんてもったいないことを。

仕掛けられる方を主人公にしていれば、あるいは仕掛けられる方が一枚上手な設定であれば、観客全員の現実感覚をぐにゃぐにゃに曲げてしまえるような、今までなかった体験をさせてくれる映画が作れたはずなのに。

ラストシーンの謎(は、ないのかも)

いったい、この映画の何がこんなに人を騒がせて、何週間もtwitterのtrending topic上位に入り続けているのかな、と思ってしまいました。ひょっとして、あの曖昧なラストシーンのせいでしょうか。

色々深読みしたい人は色々考えちゃうみたいですが、わたしはとても素直にそのまま受け入れてしまいました。
繰り返し使われていた(というかこの映画のすべての劇伴はこの曲の変奏曲)エディット・ピアフの主題歌「水に流して」の歌詞の和訳を帰宅してから探してみたら、やっぱり素直に取った方がよさそう、という結論に

いいえ、ぜんぜん  いいえ、私は何も後悔してない  
私に人がしたよいことも  悪いことも  
何もかも、私にとってはどうでもいい  
いいえ、ぜんぜん  いいえ、私は何も後悔していない  
私は代償を払った、清算した、忘れた  
過去なんてどうでもいい  
私のいろいろな過去を束にして  
火をつけて焼いてしまった  
私の苦しみも、喜びも  今となっては必要ない  
私は過去の恋を清算した  
トレモロで歌う恋を清算した  
永遠に清算してしまった  
私はゼロから出発する  
私の人生も、私の喜びも  今は、あなたといっしょに始まる

長くて短い胡蝶の夢の冒険を終えて、主人公の贖罪はちゃんと終わったのですよね。
問題は、ノーラン先生のイメージがとってもビッチなので、そんな素直にハッピーエンドにするように見えないことでしょうか。監督の性格が映画のラストに影響してしまうなんて、この映画で一番キャラ立ちしてるのはもしかしたら監督なんじゃないかという気がしてきてしまいました(こら)。

子供が振り返るとき、Don't Look Now(赤い影)を思い出して一瞬背筋が凍ったのは内緒です・・・。

すごいよ、俳優さんたち

ケナしてばかりでは精神衛生上よろしくないので、素晴らしかった点も!
巨大な機械が遠くできしんでいるような音楽がカコヨスでした! 基本的にすべてがエディット・ピアフの変奏曲であるにもかかわらず、ハンス・ジマー先生は「アカデミー賞オリジナル作曲賞にノミネートされる」と信じて疑っていない所が素晴らしいです。ぜひ受賞してほしいです。

なんだかんだ言って、俳優さんたちは全員が他のキャストでは考えられないほどのハマリ役でした。
まずは謙さん。ビギンズとは大違いで、ちゃんと出番もセリフもあるというか、ほぼ出ずっぱりでホっとしました。インタビューで「今回は日本人である必然性のない役で、それが嬉しかった」と語ってらっしゃいましたが、単なる欲の張ったエグゼクティブではなく、かといって純粋な善人ではなく、ケレン味があって華やかで、何よりあの義理堅さ。ありゃ日本人で、しかも謙さんじゃないと説得力がないと思います。

労働者階級顔なのに御曹司役がハマっていたキリアン・マーフィーも可愛かった。父のモーリス・フィッシャー役のピート・ポスルスウェイトも労働者階級顔というか「ミスター・炭鉱顔」。なので、一代で成り上がった偉大な父親と、それを越えようとしていて労働者階級の要素と温室育ち的な美しさがちょうどいい具合にブレンドされた人として、キリアンが起用されたのかな、と思ってみました。
まあ、スケアクロウのスーツ姿見てノーラン先生が「キリアン+スーツ=萌え!」みたいな感じで起用したのが真相だと思いますが、げほげほ(ノーラン先生はたぶんスーツ着た美男とかドレス着た美女とかフィルムノアールとかが大好き)。とはいえ「感動的になる」という筋書き通りに感極まってミッション終了してしまい、育ちが良くて人を疑う事を知らない二世、という一言で終わってしまうような一面的なキャラクターだったので、キリアンほどの演技力の持ち主には、ちょっともったいなかった気もします。

プリオの妻にしてラスボスの最強銀河皇帝マル様ことマリオン・コティアールさま、神々しいほどにふつくしかったです。モルは現時点ではマリオン・コティアールでなければ演じられない役かも。美しくてセクシーで上品で不安定で脆くて、なのにゾンビみたいに倒しても倒してもまた現れる。ただ、夫の後悔の気持が妻を迷宮の奥にいる怪物ミノタウロスにしてしまったのかと思うと、なんだか怪物にされてしまったモルが可哀そうで。名前もMalだなんて、悪の象徴なのかな・・・。

アリアドネもハマり役。知性とフレッシュさはあれど、セックスのにおいがゼロの女優さんなので、この男ばかりのチームにもすっと馴染んで、何の波風も起こすことなく、名前の通り主人公を迷宮から出す手助けをしてくれる清く正しい少女としての役割を貫徹。結局この名前の役割以上のキャラクターではなかったのは、折角上手い女優さんなのに、ちょっと残念でした。

やはり何と言ってもトム・ハーディが演じたイームスが、一番の儲け役だったんじゃないかと。女性に化けたり中年に化けたり、bigger dreamをぶっぱなしたり、雪山でアクション三昧だったりと大活躍で、予想外の大収穫。ニワカファンのひいき目かもしれませんが、ルパン三世みたいにチャラっとユルいのに、次元みたいに黙ってお仕事きっちり!な男の役で、大変おいしゅうございました。

トム・ハーディは役のためなら人相も体格も完全に変えてしまう、いわゆるカメレオン俳優のようですが、今回のイームス役は、話し方も含めて、かなり本人に近い気が。一見遊び人っぽい風情ながら、仕事には人一倍熱心なあたりが、本人にかぶります。雪山でのシーンは寡黙にアクションに努めていてカコヨスでしたv

「もっとデカイ夢見ろよ」やエレベーターでサイトーをからかうシーン、堅物のアーサーをからかい続けるシーンなど、このどうにもユーモア欠乏症でひよこ陛下に叱られてしまいそうな映画の中で、イームスは貴重なコミックリリーフになっていたのが嬉しかったです。ピーンと張り詰めてるだけじゃ、粋じゃないもの。どこかでプシュっとガス抜いて余裕を持たないと。あ、もちろん、謙さんの「航空会社買っちゃったけど、何か?」発言や、エレベーターの中でイームスが謙さんをからかうシーンも笑えました。

あ、500日トリリアンを好きだった子は・・・無重力でくるくる回ってました(それだけか!)。

さーて、再来年のノーランさんは

プリオさん、JGL、トム・ハーディは ノーラン先生の次なるバットマンヴィラン リドラー役候補として名前が挙がっているそうですが・・・いっそトム・ハーディにはジョーカーを継いじゃいなよ!とか思ってしまいました。だってソシオパスホームレスを演じた"Stuart: A Life Backwards" での狂気と知性の共存は素晴らしかったし、インセプションでは心に余裕のあるプロフェッショナルの役で、軽妙なようで渋さもある犯罪者役がハマっていたし。

トムなら、ジョーカーの狂気も、ちょっと悪趣味なユーモアのセンスも、フリークスとしての哀しさも異常さも、すべて手持ちのカードで演じ切れてしまいそう。そこに何をプラスアルファしてくれるかは、ノーラン先生と脚本家チームの腕次第のような気がしてきました・・・が、ノーラン先生はヒース・レジャーに敬意を表して(いまのところは)ジョーカーは復活させないつもりだそうなので、リドラーは500日追っかけっ子あたりがやるといいのかなーとか思ってしまいました。

一つ安心なのは、とりあえずバットマンは絶対にノーラン先生一人では書かないので、今回のような詰めの甘い仕上がりになる心配はなさそうなこと。次回作も、いや次回作は楽しみです!

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*1:タイトル書いちゃうと、このドラマのネタバレになってしまうので書けないです・・・