アメリカで入院したら、もう日本の病院に行きたくなくなった話。

なぜかこの記事だけ読んでくださる方が多いようなので、少し加筆します。

☆日米の保険制度の違いについては、ここでは考慮していません(アメリカの民間保険の無法地帯よりも日本の国民皆保険の方が良い制度であるのは自明です)
☆日本の看護師さん、医師のレベルは十分に高いと思っていますが、中にはあまりレベルの高くない人もいます(名古屋市在住なので、名古屋市内に限った話です)
アメリカの医療制度の方が日本より全てにおいて優っているなどとは全く思っていません
☆両親が軽症・重症含めてよく通院・入院していますが、思ったほど良い医療を受けらないことが多々あります。特に母は整形外科で誤った治療を受け、十年以上日常生活に苦労していました
☆以上の前提の上で、制度改革のような大きな話ではないけれど、ちょっとした日々のカイゼンの余地が日本にもまだあるのでは?という観点からの覚書きが以下になります


とてもとても長い話になるので経緯は省きますが、帰国直前に救急車呼んで、ニューヨークのごく普通の病院に同行者が入院しました。
ドラマERのイメージを持ってしまうとがっくりします(爆)グリーン先生なんか存在しない。といっても先生たちは休まずに働き続けながらも患者にはとても優しかったので、ただただ人手不足が問題のよう。事務員や看護師の中には、忙しさでカッカしてコワい人もいました。なかなかの野戦病院ぶりでしたよ。

後で移った普通病棟はERとは別世界。非常に安心できました。また病気になったらニューヨークまで飛んでこの病院に行きたいくらい。
先生たちはとても丁寧に患者の話を聞いてくれる。質問が的確で、上手に経緯や症状を聞き出してくれます。といっても自分の想定する病名へと誘導しているわけではなく、様々な質問を次々として行く事で、可能性を一つずつ潰して診断していく。日本では、的確な質問が出来ないお医者さんが意外と多い。痛みや症状を伝えきれなくて歯がゆい思いをした事がある方も多いのでは。外国語なのに日本の病院より上手く伝わって、ちょっと皮肉でした。


些細な事ですが感動したのが、病院側で入院グッズを一式準備して支給してくれる事。病院ガウンはもちろん、プラスティックの洗い桶のようなものを渡され、この中に歯磨き粉と歯ブラシ、リステリン的な嗽剤、石鹸、コンパクトなティッシュ一箱、水を使わなくても顔や体を洗浄できるスプレー、ベビーミルク、スリッパ代わりのゆるめで暖かい靴下(足底部分にゴムの滑りどめが付いている)が入っていました。どれもいかにも廉価版で聞いた事のない会社の製品でしたが、何も買い揃えに走らずに済むので助かります。他にもバスタオル兼用になる大判の浴用タオルを3枚くらいパっと貸してくれました。入院するだけでもストレスなのに、色々物を買いそろえなきゃとバタバタするのは、付き添いがいない患者にはもちろん、付き添いの家族にとっても結構心理的に負担なのです。*1


特に気が利いてるなと思ったのは、冷たい飲み水の入ったプラスティックのピッチャーが病室に用意されていた事。小さめのプラスティックの使い捨てコップも10個くらい付いてました。日本で入院した事のある人は分かると思いますが、薬を飲む水すら自分で準備しないといけないので、患者が自ら病院の売店でミネラルウォーターのペットボトルを買っているのをよく見かけます。患者が全く動けない場合は看護師さんが買いに行ってくれる事もありますが、買い物の使い走りは本来の看護師さんの仕事じゃないと思うので、能力と時間が勿体ないです。

アメリカの病院で支給された入院セットは、多分入院費に込みになってるんだと思いますが*2、患者と家族の負担を減らすために、日本でも是非広まってほしいな。患者と家族を安心させる名案だと思うので。

他の工夫では、患者が寝たままでも見やすい位置に、患者一人につき一枚のホワイトボードが貼ってありました。患者の名前、入院日、主訴、担当医の名前、担当看護師の名前、患者からの特記事項(脚が元々不自由etc)を書く欄が。日本だとベッドのヘッドボードに主治医と担当看護師の名前が小さく書いてあるだけの病院もあって、患者や家族と情報共有するようになってない。看護師同士の間でもポカ避けになるので、ホワイトボードも結構いいアイディアなのでは。


マズイだろうと覚悟していた病院食は意外にも美味しかった。朝食はパンとコーンフレークスと果物とフルーツゼリーまでついて、機内食みたいでなんだか楽しくなってきました(単純)。容器もカトラリーも全部使い捨てなので気楽。昼食はちゃんと陶器の器で、カッテージチーズのエンチラーダにトマトソースと山盛りの蒸し野菜、ミネストローネと紅茶。チーズはあっさりしていて味付けは丁度いい塩梅。とても食べやすかったし、病院食特有の情けなさがない。炭水化物少なめなので食べててウンザリしてこないです。

看護師さんは全員とても優しくて頼りになったし、医師は全員非常に頭の回転が速い上に患者の話をじっと聞いてから判断してくれる。投薬指示後のレスポンスも、MRIなどの画像診断の結果が出るのも早い。でもMRIは1時間かけてとても丁寧に撮ってくれた。先生の説明は英語なのに日本の医師より丁寧かつ簡潔で分かり易い。今回はたまたま当たりの病院に入院できただけなのかもしれませんが、日本でもアメリカの治療法だけじゃなくて、病院の運営方法をもっと取り入れていってほしいです。カウンセラー導入とか電子カルテとか栄養士が管理する病院食は正直患者のストレス軽減にあまりメリットになってません。むしろ今回書いたような、とても些細に思える小さな配慮の積み重ねで、入院患者と家族の気持ちが楽になる事を知ってほしいな。

とはいえ、帰国してから社長(アメリカ人)にこの話をしたら「まあ、アメリカでは良い医療にかかれるなあ、お金さえあれば」と言われてしまいました(爆)。現状では、ちゃんとした医療保険に入れる財力がないと、うっかりアメリカ在住で病気したら破産一直線なんて事もありえるのですよね。オバマがんばれ。

*1:帰国後いつもと違う大学病院に行ったら、上記と似たような「入院セット」を1000円で自動販売機で売っていました。以前通ってた大学病院が不親切すぎたのかも

*2:まだ請求の明細が届いていないので確認できません