ロンドン往復機内で見た映画:塔の上のラプンツェル、ココヴェー、The Big Dream、グリーン・ホーネット、メガマインド

とりあえずの覚え書きです。

塔の上のラプンツェル ☆☆☆1/2

物語もキャラクターも演出も歌も絵柄も「こうあってほしいな」と思う通りを更にちょっとだけ越えてくれている出来でした。ちょっと手書きっぽいアート(壁紙、天井画、モザイク画など)がきれいだし、エンドクレジットの絵は30,40年前の外国の絵本みたい。ふとwikipediaさんに聞いてみたら、この作品のアートワークは、つい先日ウォレスコレクションで見たフラゴナールの世紀のバカ絵(←ホメてますv)「ブランコ」をベースにしていたそうな。衣装の色遣いは以前のディズニー作品よりずっと落ち着いていたので、たしかにロココ調と言われればそんな感じかも?

最近のアメリカのアニメのヒロインは、やたらに前向き・パワフル・自立してる女性が描かれがちですが、継母に過保護に育てられ過ぎて天然ボケなラプンツェルの純真さ、まっすぐさのおかげで、そんなに鼻に着くほど強調されていませんでした。ある意味虐待の話でもあるのですよね。誘拐されてずっと監禁されて自由を奪われてきたのに、そんな「お母さん」の事を心から心配し、愛してしまっていた子供が真実に気付いて自由になるまでのお話。
声の出演のマンディ・ムーアも、チャックのザッカリー・リーヴァイも歌が上手くてびっくり。日本の「有名俳優が声優で出演!」もこれくらい真剣に選んでほしいなあ。

Der ganz gro?e Traum (The Big Dream) ☆☆☆☆

折角ルフトハンザだったので、ドイツ映画も見てみました。ドイツにサッカーを導入した教育者の物語。
富国強兵で北朝鮮ばりの愛国教育を強制していたビスマルクの時代。ドイツ人に初めてにサッカーを教えた、開明的なドイツ人英語教師と、ギムナジウムの子供たちの成長物語。かなり脚色してあると思うけれど、実話が元。ドイツにサッカーを導入した教育者Konrad Koch*1をモデルにしているそうです。

主演のコッホ先生役に「グッバイ・レーニン!」「ラヴェンダーの咲く庭で」のダニエル・ブリュール。街一番の名士の息子で、リバー・フェニックスgleeのカールを足したようなハンサムないじめっ子Felix役に「白いリボン」のTheo Trebs。

glee車輪の下オリバー・ツイストから上手く美味しいトコ取りしたような作品で、いじめ、体罰、貧富の差、階級差などを乗り越えて行く、さわやかなコメディでした。

行きすぎた愛国教育のせいで、英語なんか「野蛮人の言語」だから学んでも意味がないと、何もわからずバカにしてくる子供たちの興味を引くために、サッカーを英語で教えるという裏技を思いついた、若い熱血教師と、サッカーがやりたいがために、すごい吸収力で英語を覚えてしまう子供たち。クラス唯一の労働者階級出身でいじめられていた子(どう見てもオリバー)が実は天才ストライカーで、デブでバカにされていた縫製工場の息子はキーパーとしての才能が開花。それまで陰湿にクラスを支配していた金持ちの息子フェリックスの手下たちも、サッカーを続けたいがためにフェリックスの支配から独立し、「教室内カースト」がひっくり返ります。でも「いじめっ子をとっちめて一件落着」ではなく、更に色々な問題を一緒に乗り越えて、いじめっ子もいじめられっ子も一つのチームになるまでが描かれていて、このあたりはとってもglee的。

正直言って筋は読めちゃうけど、子役も大人も溌剌としていてオススメです。Felixと身分違いの恋ですれ違うメイドのロザリー役のHenriette Confuriusが可愛いです。給仕やリネン室で働く姿も見られるので、メイド好きさんにもオススメ。

ココヴェー ☆☆1/2

こちらもドイツ映画。主演がアラゴルンポール・ベタニーを足しっぱなしにしたようなハンサムアラフォーで、子役の女の子が子犬みたいに可愛かったので見てみましたが、うーん・・・。
元恋人に作品を盗まれて以来スランプ続きの脚本家が主人公。人気作家になった元恋人から、盗んだ小説を映画化したいから一緒に脚本を書いてくれと頼まれ、お金に釣られて乗ってしまう。ところが忙しくなった途端に、昔一度だけ寝てしまった女友達がこっそり産んでいた8歳の女の子を預かるはめに。自分と血が繋がっていないとは知らずに娘を大切に育て続けていた、女友達の夫との間にも奇妙な友情が生まれてしまい、元恋人ともヨリが戻せそう?という中々ご都合主義なコメディ映画。
養育費は一銭も払わない(払えない)上、お菓子与えまくりetc甘やかし放題にしておいて、「これからは父親二人+母親の3人で子育てしよう!」などという信じられない事を言い出して、母親からなし崩し的に了解を得てしまう展開にびっくり。なんなんだろう、これ?と思ったら、主演俳優が監督脚本も務めていて、娘役は実の娘だった模様。きっとドイツでは人気のある俳優さんなんだろうな・・・。

グリーン・ホーネット ☆☆

エンドクレジットで初めてミシェル・ゴンドリー監督作だと気付いてびっくり。ゴンドリーらしさゼロでした。あと、この主人公は「(明智小五郎的な意味で)イヤミなくらいに美男」でないと成り立たない気がするんですが(或いはロバート・ダウニー・Jrとか)。軽薄なバカ男でカメオ出演ジェームズ・フランコや、ロブスター解放同盟運動以来お久しぶりのエドワード・ファーロングのシーンは良かったけど、短くて残念。もっと見たかった。主演・脚本のセス・グリーンは美男たちに何か恨みでもあるのでしょーか。いや、あまねく「何の才能もないブサイク」の味方になってくれたつもりなのだろうな。ちょっと違っちゃったけど。カトー君がどうしてもジョン・チョウに見えて混乱。というか、こんなにカワイコちゃんじゃなくていいので、もっとカンフーの上手い人にしてほしかった。そしてキャメロン・ディアスはもうそろそろ年相応のキャラクターを演じさせてあげないとかわいそう・・・。

メガマインド ☆☆☆☆

意外な拾い物。主人公が元宮崎県知事に青いペンキをぶっかけたような残念なキャラクターデザインなので、日本で公開しても人気でないだろうけれど、映像も物語もとてもよく出来ていて、グリーン・ホーネットの消化不良がスッキリしました。ヒーローがヒーローであるためには敵が必要で、逆もまたしかり。かくして平和をもたらすヒーロー物語を続けるためには世界は常に怪物の危機にさらされなければならず。この二項対立から脱構築するための答えがなかなかヒネってあって面白かったです。いわばDr. Horribleやフランケンシュタインの舞台が中途で放り出した主題をちゃんと最後まで展開させた脚本、エライかも。

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*1:ハンドボール創始者でもあるようです