ニール・ゲイマン脚本Doctor Who S6ep4 "The Doctor's Wife"を見たよ


↑<!リンク先ネタバレです!>甥とおじさんとドクターとキャプションにありますが、正しくはおばさんとおじさんとドクターだと思います。

去年のS5始動の頃からニール・ゲイマンドクター・フーの脚本書くよ!というニュースが流れてましたが、ようやく放送実現。S5見てて、S3の頃より格段に予算が上がったんだろうなあと思えるほど、CGや着ぐるみから「BBCのお子様番組的ショボさ」が消えてるように思ったのですが、どうやらS5は予算使いすぎちゃってたんですね。おかげで、ゲイマン先生執筆エピソードはS6にズレ込んだのだとか。

予算のお話はさておき。11代目のマット・スミスに代替わりして以来、まだ見ていなかったS5を、ゲイマンのエピソードをリアルタイムで見るためだけに大急ぎで追っかけマラソンしましたが、いやー、ほんとにマラソンした価値があった!実にゲイマンらしくて、SFらしくて、ドクターらしいエピソードでしたv
 
モファットの書いた回は、手に汗握る冒険と、DW本来の目的の「過去の歴史のお勉強」と、キャラクター同士の心の交流や成長がきちんと描かれていて、すごくハッピーになるんですが、S5のモファットのドクター像は、SF的というよりお伽話的かなあと。ドクターとエイミーとの関係を含め、それがすごく可愛いので好きなんですが、ゲイマンのは、もっとケレン味、怖さと面白さが詰まってる感じ。

時代がかった衣装、「つぎはぎ人間」のモチーフ、「おじさん、おばさん、若い男は誰でも甥っこ」という名前を剥奪された滑稽なようで恐ろしい世界観のゴスっぷりは、いかにもゲイマン。人の心を弄んでおきながら、楽しむというよりどこかつまらなさそうなHouseの徹底的な残酷さも、いかにもゲイマン。姿が見えず、声だけで人間を追いつめるHouseという怪物の不気味さは、子供にはかなり怖かったであろうThe Silentsが可愛く思えてくるほど。マイケル・シーンの声がこんなに怖いとは知りませんでした。

この先ネタバレ。









ドクターと「妻」を会話させるだけでも、ある意味目的達成のエピソードなのに、二人が痴話げんかしてる間は不要になるエイミーとローリーの処理も実に上手で感心してしまいました。自分たちを食べようとしている怪物Houseを「楽しませる」ためにターディスの中を命がけで逃げるシーンの怖さは、子供向けなのに大丈夫かな?と心配になってしまうほど。ローリーのサウスパークのケニーっぷりに拍車がかかってました・・・。

あと関係ないけど、Outsiede of the universeに行く発想や、ファンの積年の疑問?に応えてくれる上に、とにかく爆笑の連続だった言葉遊び的な台詞の数々は、ちょっとダグラス・アダムズっぽくもありました


さらにネタバレ










ドクターは自分が世界を見るために彼女を盗んだと思っていたけど、実は彼女が世界を見たかったからドクターを盗んだ、という発想がいいなあ。旦那を手のひらの上で転がす姉さん女房でありました。彼女の「名前」も最高。たしかにドクターは彼女の事をそう言ってるし。全然言うこと聞いてくれないビッチでもあるのだけど。
そして、最後にドクターはやっぱり孤独な人であることを思い出させてくれる、お別れのシーン。リンク先のガーディアンのレヴューの「Helloが、こんなにも辛く悲しい言葉になるなんて、誰が思っただろう」という一文にうんうんとうなずいちゃいましたよ。常に彼女は一緒にいるのだけれど。うう、切ない。

モファットとゲイマンが「ドクタ・フー」というドラマに求める物はかなり違うなーという印象を受けましたが、ともに11th Doctorには「分からない」事が多いというのは共通点なのかな。9や10だったら絶対知ってるような事を11は知らなかったり「どうしたらいいんだ!」と解決法が見つからなくて叫んでみたり。ドクターよりもドクターの事を知ってるキャラクターが出てきたり。今までで一番若いドクターであるマットに合わせた変化なのだと思うけれど、万能すぎないドクターというのも面白いです。宇宙飛行士の件に関しては、エイミーとローリーにまで心配されてるし。自信に充ち溢れていた10とはかなり違うドクター像だなあと思います。

それにしても、つくづく今こんなに面白い子供向けドラマ見て育っている子供たちは幸せだなあ〜とうらやましくなってしまいました。自分も子供としてこのドラマを見てみたかったな。怖がりだったから、テレビから逃げちゃてるかもしれませんが!
ドクター・フーを見て育ったモファットやゲイマンが作家になり、今度は二人が書いたドクター・フーを見て育った子供たちの中から、将来また作家が生まれるのかな。どんな作品を書いてくれるのか、楽しみです。ってその頃にはわたしゃおばあさんですが!でも、待ってるよ!