マッドメン S1Ep13「回転木馬」

12話から見始めたので、あっという間にシーズン1の最終回(爆)。
今週は、1)ドンとドンの美しすぎる妻ベティ、2)ドンの野心家だけどコネ頼みの部下ピーターと不妊症の妻とKY父、3)秘書からコピーライターに大抜擢されたペギーという3つエピソードをほぼ同レベルで描いていました。ドン・ドレイパーの過去を振り返る事に終始していた先週は、ひょっとしてイレギュラーな回だったのでしょうか。先週面白いのに何か足りないと思っていたのは、多分ペギーだったのだと思います。女性差別の激しい60年代のアメリカで、非常に現代的な感覚を持っているけれど、声高に叫んだりしないペギーという共感できるキャラクターにスポットが当たった事で、たまらなく次のシーズンが気になってきました。

そしてサブタイトルの「回転木馬」に込められた二重三重の意味に、じんわりと感動。上手い脚本、巧い演技だなあ・・・とエミー賞で快進撃を続ける理由がようやく分かりました!

以下、最終回について激しくネタバレです。












ペギーと妊娠

先週はあまりスポットライトが当たっていなかったけれど、今週かなり目立っていた、ちょっとふくよかなペギーのキャラクターが気に入ってしまいました。なんとなくふっくら体型と知性とひたむきさと芯の強さが、Life on Marsのアニーに似ている気が。
彼女の才能を理解しない男尊女卑な職場でヒラに甘んじていたけれど、理解のある上司によって、当時としては異例の抜擢を受けるあたりも。その上司が「身元不詳の男」で自らのアイデンティティに苦しんでいるという設定はもちろん、60年代(LoMは70年代)を克明に再現している点も近いものがあるので、ひょっとしてMad Menのヒントになったのかな、と思ってしまいました。(LoMは2006年1月〜2007年4月の放送。Mad Menの放送開始は2007年7月)

ええ、ホメておいてなんですが、こんな未熟児じゃない丸々した赤ちゃんが産まれるまで妊娠に気が付かないってありえるのーーーーーーー?! まあ、男尊女卑のまだ厳しい時代に秘書からコピーライターに抜擢されたペギーは、ちょっとくらい生理が止まろうがお腹が痛かろうが、全部無視してがむしゃらにがんばってきた、という事なんですよね、たぶん・・・。

これからクレアラシルという大口クライアントのコピーを任されたペギー。当然子供の事は誰にも言わずにシングルマザーとして育てるつもりだと思うのですが、一体どうやって乗り切って行くのでしょうか。あっさり養子に出したとかいうオチにはならないと思いますが。うーん、続きが気になります!

それにしても、クライアントを架空の企業にしないで、コダッククレアラシルなど、2010年でも現役の実在の大企業にするあたり、現代の視聴者にもドンやペギーの仕事の大きさがすぐにピンと来るようにしていて上手いですよね。

ドンのプレゼンと「回転木馬

これは泣けました>< 
ドンはコダックの回転式のスライドプロジェクターのネーミングというデカイ仕事で頭がいっぱい。感謝祭にすら顔を出さないと告げ、美しすぎる妻の不安と我慢は限界寸前。美しいだけでなく、とても賢明な人なので、ヒステリーを起こして不満を訴えたりせず、表面上はとても冷静に我慢してドンを支えてくれていますが、大丈夫なのかな・・・。

意外な事にドンがプレゼンで使ったのは、自分の家族の写真。無邪気に遊ぶ可愛い子供たち、妻との和気あいあいとしたツーショット、幸せいっぱいの結婚式・・・自分が仕事の為に切り捨ててきた物をあえて大写しにしながら、ドンが噛みしめるようにクライアントに伝えた台詞は、彼の境遇とオーバーラップしていて素晴らしかったです。

確かに派手な技術は消費者の目を引きます。
しかし、それ以上に消費者の心を揺さぶるのが、製品に対する特別な愛着です。

最初の職場の毛皮会社に、テディというコピーライターがいました。
彼いわくまず広告に欠かせないのは、目新しさとニーズを想起させる要素。そして製品は自然と消費者の家に収まる。

何が製品への深い愛着につながるのか。
たとえばノスタルジア。それは繊細で、強い想いです。
テディは言いました。「ノスタルジアの元来の意味は『古傷の痛み』」

それは記憶を圧倒するほど力強い心のうずきです。
この機械は宇宙船ではなく、タイムマシンです。
時間を戻したり進めたりして、戻りたいと渇望する場所へ連れて行ってくれます。
「車輪」というより「回転木馬」です。子供がする冒険にも似ています。
ぐるぐる回って必ず家に戻ります。自分が愛される場所へと。

コダック側は競合のプレゼンを即キャンセルして、ドンの提案を採用。ドンのネーミングは回転木馬(カルーセル)」。って、今も使われている「カルーセル式プロジェクタ」のネーミングはドンのおかげだったの!?というメタフィクション的な展開に。

それだけでなく、回転木馬」といえば、ロジャース&ハーツが書いた、家族と上手く行かない父親を描いた「泣ける」ミュージカル作品。ある遊園地の回転木馬の呼び込みだった不器用な男が、妻に優しくしてやれないまま強盗を企てて亡くなり、天国の番人のはからいで一日だけ地上に降りて、「強盗の娘」として辛い思いをしている娘に会いに行く物語。上手く思いを伝えられなくて、結局娘にも手を上げてしまいますが、最後には娘は友だちと和解する事が出来ます。この時エンディングで流れる"You'll Never Walk Alone"は、何故かイギリスのサッカーチーム Liverpoolの応援歌として愛されているアレです。

ドンは決して妻子に手を上げたりする事はありませんが、色々事情があるので家族から離れていたいんですよね・・・。妻から見れば家族より仕事優先なドンに不満を感じるのは当然。でも、ドンはコダックのプレゼンで家族の思い出を振り返り、急いで家に帰り、ようやく「感謝祭は一緒に行く」と告げて妻と仲直り。
・・・でもそれはドンの願望でした>< 現実では、妻はドンを待たずに子供たちを連れて実家へ帰った後。誰もいないがらんとした家で、階段の下に座り込んで呆然としているドンの画が切なかったです。

回転木馬」から連想されるノスタルジックな古き良き時代の象徴である、コダックのスライドプロジェクタとミュージカルを見事にオーバーラップさせた展開に、思わず唸ってしまいました。そらエミー賞にも愛されるわけですね。納得!でした!えーい、どうやったら中部地方でもシーズン2が見られるのでしょうか?やっぱりレンタルかなあ・・・。

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